¹山里　平・²宮村淳一・¹森　博一・¹碓井勇二・¹佐久間喜代志・ ²渡辺精久・²佐藤十一・²高橋裕二（¹気象庁火山課、²札幌管区気象台）
（火山学会秋季大会で発表、2002年火山学会誌第47巻4号に掲載）

　2000年3月31日に噴火を開始した有珠山では、西山西麓火口群と金比羅山火口群で、水蒸気爆発を繰り返した。この間に観測された火山性微動や空振データからみた、水蒸気爆発の推移を概観する。

１　火山性微動の推移と特徴

　火山性微動は、噴火開始当初はその振幅は小さかったが、4月5日頃から次第にその振幅が大きくなり、4月中旬頃には、約1時間おきに周期的に微動振幅が大きくなる現象（バンド状微動）が見られるようになった。5月に入ると、ほぼ一定振幅の連続微動が卓越する状況となり、時折微動振幅が短時間大きくなるようになった。6月以降も連続微動は継続したが、時折その振幅が小さくなる現象が見られるようになり、6月下旬以降、微動の振幅が小さい期間が目立つようになった。火山性微動のスペクトルは、概ね活動期間中大きな変化は見られず、1〜2Hzの波動が卓越している。

２　空振波形とその特徴

　火山性微動が大きくなった4月上旬以降、空振計にパルス状の空振が頻繁に観測されるようになった。空振の振幅は、火口から数kmの観測点において、最大で数十Pa程度である。パルス状の空振は、噴火活動期間中、2〜3秒おきに発生することが多い。
　観測点ごとのパルスの到着時刻差からその波源を求めると、西山西麓、金比羅山のそれぞれの火口付近に求まり、それぞれの火口からの噴火に対応することがわかる。また、金比羅山の2火口からのシグナルが混在している場合もある（例を図1に示す）が、走時差からこれらを区別することは可能である。
　また、パルス状空振は著しい指向性を示し、特に金比羅山火口からの空振は火口より北側の観測点で他の方位にある観測点に比べ極めて大きな振幅を示す。これは、地形による影響と考えられる。

３　火山性微動・空振の推移と表面活動

　以上の微動データと空振データを、上空からのビデオ観察結果と併せてみると、微動振幅はパルス状の空振が多発する時期に大きくなり、それぞれのパルスは火口から噴石・噴泥を飛散させる小爆発（炸裂型噴火）に対応することが明らかになった。
　パルス状空振の活動の推移を図2に示す。西山西麓火口からの空振は、4月下旬以降激減し、5月以降はほとんど観測されなくなり、金比羅山の2火口からの空振が継続した。一般的にK-A火口の空振の方がK-B火口の空振に比べ振幅は大きい（図1参照）。時間間隔はK-A火口のものは長く、振幅の変動幅も大きく、ほとんど空振が観測されない時期もあるのに対して、K-B火口の空振は1〜5秒の一定間隔で、消長はあるが、ほとんど休止せずに継続した。ただし、6月下旬以降、K-B火口からの空振がほとんど停止し、時折短時間発生するパターンに変化し、空振が停止している間火山性微動の振幅が著しく小さくなることが多くなった。炸裂型噴火の活動度の低下を示すものであると考えられる。

図1　炸裂型噴火に伴う空振の波形例。上から、虻田栄、滝之町、洞爺中島、壮瞥温泉、洞爺村の順。2分間の波形を示す。

図2　微動の振幅推移と空振の推移。

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